イリジウム添加による鉄-コバルト合金の磁気特性の増強メカニズムを解明
~放射光計測と高品質薄膜技術で磁性材料の精密評価を実現~
発表内容要旨
東京理科大学研究推進機構総合研究院の山崎貴大助教、同大学大学院先進工学研究科マテリアル創成工学専攻の河崎崇広氏(2024年度 修士課程2年)、同大学先進工学部マテリアル創成工学科の小嗣真人教授、物質?材料研究機構の岩崎悠真主任研究員、桜庭裕弥グループリーダー、高輝度光科学研究センターの河村直己主幹研究員、兵庫県立大学高度産業科学技術研究所の大河内拓雄教授らの共同研究グループは、軟X線と硬X線を用いたX線磁気円二色性(XMCD) 測定により、鉄(Fe)-コバルト(Co)-イリジウム(Ir)合金が優れた磁気特性を引き起こすメカニズムを解明することに成功しました。
本研究成果は、磁性材料の理解を深めるだけでなく、磁気特性向上の新たな指針を示し、高効率モーターや革新的な磁気センサーなど次世代技術の実現に貢献する基盤となることが期待されます。
磁性材料はモーターや発電機をはじめとしたさまざまな機器に使用されており、日常生活に欠かせない材料です。これまでの機械学習を活用した材料探索により、FeCo合金にIrを添加すると優れた磁気特性を示すことが見出されていました。しかし、その特性の起源については未だ明らかになっておらず、根本的なメカニズムの解明が強く求められていました。そこで本研究グループは、Fe-Co-Ir合金に焦点を当て、物質?材料研究機構の技術により、組成傾斜を持つ高品質な単結晶薄膜を作製することで、多様な組成条件下での磁気特性を体系的に評価しました。
本研究では、大型放射光施設SPring-8を利用して、軟X線と硬X線を用いたXMCD測定を実施し、理論計算等を組み合わせて、各元素の磁気モーメントにおけるスピンと軌道への寄与を評価しました。その結果、Ir添加がFeとCoの磁気モーメントを増強し、特に軌道磁気モーメントの寄与がスピン磁気モーメントの寄与を上回ることを明らかにしました。また、汎関数理論計算により、I r添加が電子の局在化を促進し、5d重元素と3d遷移金属間の相互作用を強化することを解明しました。
なお、本研究成果は、2025年3月12日に国際学術誌「Physical Review Materials」にオンライン掲載されました。
詳細
問い合わせ先
兵庫県立大学高度産業科学技術研究所
教授 大河内 拓雄
TEL:0791-58-0409 E-mail: o932t023@guh.u-hyogo.ac.jp
兵庫県立大学高度産業科学技術研究所
高度産業科学技術研究課長 佐々木正和
TEL:0791-58-0249 E-mail: masakazu_sasaki@ofc.u-hyogo.ac.jp
同時資料提供先
兵庫県教育委員会記者クラブ、西播磨県民局記者クラブ、中播磨県民センター記者クラブ
[東京理科大学から] 文部科学記者会、科学記者会